IRRESISTIBLE
(へぇ。似てるようで似てないねぇ…面白い!!)
少し緊張した面持ちで、雷堂とそっくりな格好&そっくりな猫を連れた少年(雷堂は青年って雰囲気だけどこっちは少年だなぁ…)は「突然すみません。え、と。はじめまして…葛葉ライドウです」とぺこりとお辞儀をした。
かしこまったようにお辞儀するライドウに、鳴海は(うは。うちの雷堂と大違い!)と驚いた心を隠して「はいはい。よろしく」と笑みで応える。
まったりのんびり楽しむ午後の一時に、突然雷堂から「もう一人のライドウが来た。暫くこちらに居候させて貰う」なんて言葉を聞いて吃驚した鳴海だったが、以前の事件の報告を聞いていたのと「寝泊りは我の部屋で問題ない」という雷堂の妙に自信たっぷりな説明に「じゃ、いいんじゃない?」と軽く了承の返事をした。
「で…雷堂と、えっと君は、ライドウ君でいいかな?とりあえずなんでこうなったのか教えてくれない?」
雷堂の淹れたコーヒーをずずっと一口すすって、鳴海は状況の把握と確認を取る。
「はい。俺達は以前とある事件の捜査中敵の術を受けてこちらの世界に来たんですが…」
「あ、それは聞いてる」だからそれ以降の話でいいよ。
「えっと、では…自分の世界に戻る際に雷堂の使った秘術、それを使ってこちらにきました」
「なんで?」結構それ、危険な術なんだよね?
うちの雷堂それ使ってぶっ倒れたって聞いたけど…。と鳴海がちらりと雷堂へと視線を向けると(余計な事は言うな)とばかりに鋭い視線で返された。
「はい。危険な術ですが…戻ってから沢山お世話になったのに、たいしたお礼もしていなかったので…来ました」
雷堂はもちろんですが、貴方にも無断でこちらの探偵社に寝泊りさせていただいてましたから…。とだんだん小さくなる声でライドウがここに来た理由を話す。
「お礼を済ませたらすぐ戻るつもりでいたんですが…ごめんなさい」すぐには戻れない様なんです。
「二度もここへの道を作った所為で、暫くは戻れない状況になっているらしい」
「へ?どういうこと?」よくわからないよ?
「ヤタガラスの使者が言うには空間を繋ぐ道に歪みが起きて、それが収まらん限り同じ術を使っても戻れる保証がないそうだ」
「あ。そういう事」
「すみません。こんな事を引き起こすなんて想定していなかったので…」
お礼のつもりが逆にご迷惑をおかけする事になってしまいました。と益々小さくなって謝るライドウを雷堂が(そんな事は気にするな我は構わぬ)と肩を抱くように宥める。
ガチャ…。
「あ!」「おい!」
鳴海の手から滑り落ちたコーヒーカップが、テーブルの上に茶色の水溜りを作る。
(びびび…吃驚した。雷堂があんな顔して人を慰めるなんて!…でも、こういう時の行動は同じなんだねぇ)
動揺してカップを取り落としたまま硬直していた鳴海だったが、全く同じタイミングで台拭きに手を伸ばした雷堂達を冷静に分析していた。
「話を聞きながらまた寝ていたのか」とぶちぶちと文句を言いながらカップと台拭きを持って台所へと消える雷堂と「鳴海さん怪我はありませんか?」と心持ち心配そうに尋ねるライドウを見て、鳴海は初めてライドウの顔に傷がない事に気が付いた。
「君は傷…ないんだね」
「え?あ、はい」ありません。
(そうかー。傷がないと実は雷堂の顔って、綺麗なのにちょっと幼い感じに見えるんだなーこれは新たな発見だ)
「な、鳴海さん?」「鳴海!」
ぐいと大きな雷堂の掌が鳴海の額に当てられ、ひっぺがされてから初めて鳴海は無意識にライドウの顔を両手で触れていた事に気づいた。
「あぁ、ごめん。つい」綺麗な顔だったから。
そう言って、へらりと笑った鳴海に雷堂は眉を寄せて睨んだ。
こうして鳴海探偵社に、期間限定の助手が一人増える事となった。
「雷堂と待ち合わせでもしているのかい?」
雷堂が外に出ている間、鳴海の手伝いとして資料整理をしているライドウがちょくちょく時計を気にしている事に気づいた鳴海はにこやかな笑顔で問いかける。
「え?いえ…そういう約束はしていません」
どうしてですか?という風な視線で言葉を返すライドウに、鳴海は「そうなんだー」と答えながら席を立つ。
「あの…」何でしょう?
「んー?どうしてライドウ君は俺が近づくとそうやって逃げるのかな?と思って」
あからさまではないが、なぜか近づく鳴海に対しライドウは必ず微妙な距離を保とうとする。
「別に逃げては…」
「逃げてる」よね。
タン。と鳴海が壁に手を着いてライドウの行く手を遮ると、ライドウから僅かに動揺する気配が感じられて…鳴海の気持ちがささくれ立つ。
「なーんか傷ついちゃうなー」向こうの俺ってそんなにも信用の置けない人物だったの?
少しだけおどけて鳴海がそう口にすると、ライドウは「そんな事ありません!」と必死な様子で弁明する。
「じゃ、なんで緊張してんの?」
「緊張なんてして…っ?!」
緊張なんてしてません。と言いかけたライドウの唇が、しっとりと温かい鳴海の口に塞がれる。
「な、いきなりっ何をするんですか!」
「あはは。雷堂とは違う反応だね」真っ赤になって初々し〜。
いきなりの口付けに、顔を真っ赤にして驚いたように何度も瞳を瞬かせたライドウが、鳴海の言葉にヒクリと震える。
「雷堂と…?」違う反応?
「雷堂って、口付けとか…上手でしょ?」
自分の言葉にキョトンとした顔をするライドウの耳元に、鳴海は悪戯っぽく笑ってこっそりと囁く。
「?!」
囁いた途端、湯気が出そうなほど真っ赤だったライドウの顔色がサーっと青冷めてゆく様に、鳴海は(おや?)と首をかしげた。
「えっと、ライドウく…」「すみません、少し外に行ってきます!」
鳴海の言葉を遮り、ライドウは脱兎の如く探偵社の外へと飛び出していった。
「はは…ちょっとカマかけただけだったんだけどな〜」もしかして、大当たりだったのかな?
以前不意を付いて雷堂に口付けした時は、なんと言うか多少は驚いたみたいだけれどメチャクチャ対応が冷静だったから…こっちのライドウ君の反応は超!可愛かったんだけれど…。
「こりゃ、まずい地雷踏んじゃったかも」と勢いよく閉まった探偵社のドアを見つめて鳴海は頭をかいた。
「十四代目はどうした?」
調査から帰ってきた雷堂は、いつも嬉しそうに自分を出迎える人物が居ない事に眉をひそめ、鳴海に尋ねる。
「ごめん雷堂!ライドウ君をちょっとからかったら出て行っちゃった」
両手でパンと拍手を打つようにして謝る鳴海に、雷堂の眉が不機嫌な形に寄る。
無言で怒りオーラを纏ったまま探偵社のドアを開ける雷堂の背中に「ホント。ゴメン。帰ったらちゃんと謝るから」と鳴海の声が追いかけた。
「やはりここにいたか」十四代目。
走ってきたのか、息を切らしている雷堂の声が名も無き神社の境内に響き、一人そこに座り込んでいたライドウの肩がビクリと震える。
「雷堂…」
「鳴海と何があった?教えろ十四代目」
少しだけ瞳に炎を宿した雷堂に詰め寄られ、無意識に後ろへと下がったライドウの背に境内の壁が当たる。
「ごめんなさい。俺、知らなくて…貴方と鳴海さんの関係に気づかなくて…いきなり押しかけてきて、すみませんでした」
さぞご迷惑だったでしょう。とライドウは溢れそうになる涙を堪えて頭を下げる。
「何を言っている?」
ライドウの言葉の意味を図りかねた雷堂は訝しげに眉を寄せた。
「我と鳴海の関係は、探偵とその助手以外にないぞ?」
俯いているライドウを慰めるように抱き寄せて囁く雷堂の言葉に、ライドウは緩やかに頭を振る。
「だっ…て、鳴海さっん。雷堂と反応が違うっ…て!っ口付けとかっ、っ…上手でしょ、って!!」
「十四代目、お前…それで、泣いてるのか」
「悪いですかっ?それでっ泣いて…悪いですか!」
はらはらと涙を零すライドウが、抱き寄せる雷堂の胸を叩く。
「ライドウ」
「雷ど…ん、ゥ…ん」
涙を流すライドウの顎を強引につかみ上げて、雷堂は深く唇を奪う。
ヒクヒクと嗚咽を堪える舌を絡めとり、たっぷりと舐ってライドウの意識を蕩かす。
「ふっ、ぅん、は…ぁ…」
コクリ。コクリとライドウの喉が何度も動き、喉を通れなかった唾液がつぅ…と口端から零れる。
「ぁ…ぁ、んっ」
カクンと膝が砕け、ずり落ちそうになるライドウの足の間に膝を入れた雷堂は、壁に押し付けるようにライドウの身体を支えた。
「向こうの鳴海がどんな男かは知らぬが…こちらの鳴海は時折人を食った様な悪戯をする」
ちゅ。ちゅ。とライドウの頬や瞼に口付けを落としながら雷堂は言い聞かせるように言葉を綴る。
「こちらがそれにどう反応するのかを見て楽しむのだ」我も数度驚かされている。
「え…悪、戯?」アレ(口付け)が…?。
雷堂の言葉を反芻するように呟いたライドウは、ハタと気づく。
そういえば自分の世界の鳴海も、ああいう形ではないが口付け紛いな事などをしてはゴウトに怒られたりしていた。
「俺、馬鹿みたいですね」鳴海さん、驚いたでしょう…。
からかっているつもりの相手が真に受けて飛び出して行ってしまったんですから…。
「馬鹿ではなかろう。その素直さが貴様の良い所だ」
ほっとしたように、そして少し恥ずかしそうに俯いたライドウの首筋に、優しい雷堂の言葉と唇が降りる。
「っあ…」
ヒクリ。と肩を震わせるライドウに「今回は裏目にでたがな」それもまた可愛いと我は思うぞ。と少し笑みを含んだ声で囁きながらライドウの衣服に手を掛ける雷堂に、ライドウは「気をつけます」とはにかんだ笑みを見せた。
雷堂…雷堂。と熱に浮かされたように名を繰り返し、甘えるように身を寄せるライドウの内を、熱く濡れた雷堂の楔が思うさま抉る。
切れ切れに艶のある声を発しながら縋りつくライドウの、トロトロと快楽の雫を垂らす中心を淫らな水音を立てて雷堂の手が扱きあげると、極みに到達したライドウの背が撓り内に収めた雷堂の楔を締め上げた。
「クッ…、っ」
その絡みつく熱に雷堂も息を詰め、吸い上げるように収縮する内壁に精を放つ。
「ら、いど…ぁっつ…い……」
注ぎ込まれる精を全て受け止めたライドウは、身体を震わせながら恍惚とした表情を浮かべると…すとん。と落ちるように意識を失った。
「お帰…どしたのライドウ君?!」大丈夫?
雷堂達の帰りを気をもみながら待っていた鳴海は、雷堂の腕に抱かれて現われた意識のないライドウの姿に驚きの声を上げる。
「問題ない。暫くすれば目を覚ます」
慌てたように椅子から立ち上がった鳴海に大丈夫だと雷堂は答え「悪いが我が布団を敷く間、十四代目を見ていてくれ」と静かにライドウをソファへと横たえさせた。
良からぬ事はするなよ。と雷堂はライドウの元へと近づく鳴海に一言を添えて自室へと向かった。
「よからぬ事って…ねぇ」
雷堂の置いていった台詞に「参ったね」と肩と竦めた鳴海は、眠っているライドウを心配の色を含んだ瞳でそっと覗き込む。
「わっ…っ」わー。わー。
覗き込んだ鳴海は、思わず大きな声を上げそうになった自分の口を手で押さえた。
ソファに横たわるライドウ。
閉ざされた瞼を彩る睫と薄く開かれた唇はしっとりと潤いを含み…頬はほんのりと紅色を刷く。
珍しく軽く肌蹴られている襟元からは花びらの様な紅色の跡が覗いていて…眩暈のするような艶やかさを醸し出している。
(おいおい…ちょっとこれは艶っぽすぎないかいライドウ君…)
遊郭のお姐さんに負けない色香、感じるんですけど…と鳴海の喉が無意識にコクリと鳴った。
「所長」生きていたければ、其処でやめておけ。
意識せずライドウへと伸びていた鳴海の手が、唐突にかけられた声にビクンと止まる。
「あ。雷堂」早かったね。
無意識の自分の行動と、雷堂から醸し出される威圧感に内心かなり動揺していたが、鳴海は「生きていたければって酷い言い様だなぁ」とおどけてみせる。
「ん。雷…ど…?」
ソファに眠るライドウを「生憎、こればかりは誰にも譲る気はないのでな」と雷堂が抱き上げると僅かにライドウの睫が震え、吐息のような声が零れた。
「我はここにいる」
目を細め、優しげに囁く雷堂の言葉と瞼に当てられた唇の感覚に、覚醒しかけたライドウは安心したように微笑んで再度眠りへと落ちてゆく。
「今日はもう休ませて貰う」
そう言ってドアへと向かう雷堂を鳴海は「あ、うん。おやすみ」と惚けたように見送った。
「ん〜〜…」微妙な気分だね。
パタンと静かに閉じられた扉を見つめ、鳴海は煙草に手を伸ばした。
end
「うにとろどん」のうにとろ様から1万Hit小説のお礼に、と恐れ多くも頂いた雷ライ←鳴海小説です!
「雷ライに入り込めない鳴海が切ない感じだと良いです!しかもエロで」などというめちゃくちゃなリクエストを聞いてくださってありがとうございました…!
いやもう、リクエストいただけただけでも最高に嬉しかったのにお返しまでいただけるとは…恐縮です、でも嬉しいです!
かわゆらしいライドウちゃんに萌えです。くっ、なんて純情!そしてやっぱり雷堂は王子様だな★と思ったM1号なのでした…。
有難うございました!
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