首吊り人の懺悔
男の腕の中で身悶える少年の白い肌は、貪るように吸われると容易く朱く染まった。
噛み殺すような吐息。
鳴海は少年の耳元で囁く。
「どうした、ライドウ。抵抗しなきゃ駄目じゃあないか」
熱く湿っているくせに冷淡なその声色に、ライドウはぞくりと背中を粟立たせた。

「っ…」
甘んじているわけではない。先程から力一杯抵抗している、のだ。しかし鳴海の強い腕はぴくりとも外れない。
本来ならば人間の腕力など振り払うことは造作もないはずなのに。
澱のように地面を漂う血腥さが鼻腔の奥を刺して思わず吐き気が込み上げ、ライドウは噎せる。
仲魔は全て倒され、累々とした死体の真ん中でライドウは鳴海に馬乗りにされていた。
その首筋を片手で締め上げ動けぬように固定して、鳴海はライドウに唇を寄せる。奪うような口付けはしかし甘く官能的で、それが尚更ライドウを嫌悪させた。

「鳴海さんから、離れろ…」
顔を背けるとぎりりと締められる喉。圧迫感に耐えながらライドウは小さくそう喘いだ。
途端に弾ける様な哄笑が響く。
「ははははは!俺は鳴海だよ、ライドウ。鳴海の中にある欲望が俺を生んだのさ」
違う、と呟いたライドウの頬は力一杯に張られた。
「違わないね。これが鳴海だ。腹ン中ではお前を滅茶苦茶にしてやりたいと思ってる、これが鳴海だよ」
「違う…」
「認めたくないか。お前のせいだ。お前のせいで鳴海は魔界に身を貶めたんだ!ははははは」
鳴海のものなのか悪魔のものなのか。
憎しみの篭められた声に、ライドウはぎりと唇を噛む。

罪の意識が魔を呼んだと言うのなら―――。
それは罪などではなかったのだ、と。
今更どうしたら伝えることができるだろうか。
「さぁ、おとなしく抱かれろよ。死ぬまでゆっくり犯してやる」
悪魔は鳴海の顔で優しく囁く。

「大丈夫、すぐに天国へ辿り着けるさ」

end
2006/03/23
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